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ヒツジシネマ

新卒フリーランスライターによる映画ブログ

【ネタバレ注意】映画『愛を読むひと』からみる”価値観の違う人”とのつきあい方

洋画 ヒューマンドラマ 恋愛

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以前から気になっていた映画『愛を読む人』を最近観ました。原作は『朗読者』という小説。映画のタイトルからして、ロマンチックなテーマを重めに描いた作品なのかなぁ~と思っていましたが、正直この作品、”愛”はまったく関係ないんじゃないのと思うくらい観る前の印象と違いました。

感想を一言で表すなら、「”価値観が違う”とか”死ぬほど恥ずかしい”という言葉は、この映画を観たら軽く言えなくなるな」でしょうか……それくらいこの映画に登場する女性、ハンナの価値観は、一般的とは言えませんでした。

価値観の違いという言葉がこの映画のテーマではないかもしれませんが、今回は『愛を読むひと』を通して、価値観が大きく異なることの苦しさと、価値観が違う人との上手なつきあい方を探っていきます。ネタバレ注意!!

3分でわかる『愛を読むひと』のあらすじ

ハンナとマイケルの出会いと別れ

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15才のマイケルは、学校の帰り道に具合が悪くなり、そこに通りががった21歳年上の女性、ハンナに介抱されます。それをきっかけに2人は男女の関係になり、ケンカをすることもあれど、どんどん彼女に夢中になっていくマイケル。

ある時ハンナはマイケルがたくさん読書することを知り、「本を読んで聞かせて」と頼みます。マイケルは、彼女にたくさんの本を朗読し続けました。

しばらくして、ハンナは駅員の仕事が評価されたことにより、事務職へと昇進することに。しかしその日を堺に、彼女はマイケルの前から姿を消してしまいます。

マイケルの目の前に現れたハンナは被告人

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訳も分からずハンナを失って長い時が過ぎ、マイケルは大学の法学部に入学。ゼミの研究でナチスの戦犯の裁判を傍聴しに行きますが、なんとその裁判の被告人席には、ハンナが座っていたのです。

彼女はアウシュビッツ強制収容所の看守で、囚人を"選別"したり、収容所が火事になっても解錠しなかったために300人の囚人が焼死したなど、複数の殺人容疑がかけられていました。

ハンナ以外の元看守たちが「すべてハンナの指示だ」と主張したため、筆跡鑑定を行おうとしましたが、彼女はペンを手に取らず、「すべて私がやりました」と認め、無期懲役刑に。それを見たマイケルは、彼女の今までの行動などから彼女が文盲であることに気づき、裁判長に言うか悩んだ末、ハンナの強い意志を尊重することを選びます。

マイケルが本を読み、ハンナは文字を覚える

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ハンナの服役が始まってから10年ほど後、マイケルは彼女のいる刑務所に本を朗読したテープを送ります。そして彼女は、彼が朗読した本を開き、ゆっくりと文字を学び始めました。

それからまた10年後、仮出所が認められたハンナの唯一の身寄りとしてマイケルのもとに連絡が入り、刑務所で面会します。2人はそこで少し言葉を交わし、マイケルはハンナが生活できる用意をしたことを告げ、1週間後に迎えに来ると約束。しかし約束の1週間後、マイケルが迎えに来たその日に、ハンナは首を吊って自殺するのでした。

予告ムービー


6月19日公開『愛を読むひと』予告編

ハンナの"価値観"について

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文盲であることを死んでも知られたくない

あらすじからもわかるように、ハンナという女性は、字を読めないことを極端に隠したがります。マイケルや囚人に本を読ませるも自分は決して読まないハンナ。マイケルと出会った頃、2人でレストランに入るも、メニューが読めなかったために「あなたが選んで」と言うシーンでは文盲を隠していることが顕著に表れていました。

彼女は字が読めないとバレないためなら仕事も辞め、マイケルも捨て、重い殺人罪も1人で背負います。それほどまでに彼女は字が読めないことを”恥”だと考えているのです。そのさまは、こだわりとかプライドなどではなく、宗教の教えを守る信徒のようでした。

アウシュビッツに囚人を送った理由

裁判でハンナは”選別”について「次々と新しい囚人がくるため、すでにいる囚人をアウシュビッツに送るのは仕方のないことだった」と、そして火事については「ただでさえ爆撃で街中が混乱している中、囚人たちを放ってしまえば秩序が保てなくなる」と発言。

囚人の命<収容所の容量、300人の命<秩序と思われても仕方のない言葉です。しかし、おそらくこれは自分を正当化するための単純な言い訳ではなく、彼女が本当に思っていることだったのではないでしょうか。

彼女にとっては、「自分は正しかった」という良し悪しの判断はなく、どこまでも「こうだったからこうした」というだけの話に過ぎないのかもしれません。そのような価値観で選別を行ったからこそ、マイケルに「私が何を思っても死んだ人は生き返らない」と言った。それがハンナの価値観なのでしょう。

ただ、裁判長に「新しい囚人を入れるためにすでにいる囚人は死んでもいいと思ったのか?」と反論されたときの表情や、病人や老人を優先して選別したことを考えると、罪悪感というより、”罪悪感に近い感情”があったのではないかと思います。しかしそれは一般的な罪悪感とは似ても似つかないもので、周囲の理解を得ることは難しいことです。

おまけ:マイケルの行動に激怒したハンナ

上の2つより前の話になってしまいますが、マイケルと盛り上がってた頃、ハンナはマイケルによくわからない理由でめっちゃキレたことがあります。

それはハンナが働く車両とは違う車両に乗ったことに対して、「私を無視しやがって!!!!」ととんでもなく怒り狂っていたんですが、あれよくわからなかったというか、「ホルモンバランス崩れてんのか?」と思うくらい理不尽な気がします。

マイケルも「キスできるかなと思って……」と童貞こじらせたやつみたいな理由だったのでマイケルもマイケルなんですが、それにしてもそこまで怒らないであげてーと思うようなシーンだったことには間違いない。

これもある意味ハンナの価値観なのかもしれません。ちょっとした発言や行動がその人の逆鱗に触れたなんてこと、実際ありますもんね。(ちなみにその後ももう一度ケンカしますが、それはハンナが昇格された日だったので理解できる)

価値観が違う人との上手なつきあい方

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①相手の価値観を変えようとしない

相手の単純な習慣はもしかしたら変えられるかもしれませんが、根本的な性質や、それに伴う行動はまず変えられないことをしっかり認めることが、上手なおつきあいの最重要ポイントだと思います。

専門家じゃないので確実なことはまったく言えませんが、もし変えられるとしたら、本人が自分の価値観を悪い・変えたいと本気で思っていて、その価値観でいた時間分(幼少期からならほぼ年齢分)をかけて、ぬかりなく矯正していく、くらいしなきゃ難しいでしょう。これでも変わるかどうか……

また、本当の意見を言えない人は、会話より行動に価値観の違いが表れます(よくある例としては、謝るのに浮気をくり返すとか禁煙すると言ってるのにタバコやめないとか)。こういう場合は建前の言葉を信じ、期待してしまうと思いますが、まず無理です。

②自分が共感されると期待しない

先ほどちょっと触れましたが、マイケルが面会したとき、ハンナに「あの日のことを考えるか?」と問います。ハンナは「私たちのこと?」と聞き返しますが、マイケルは「違う、それじゃない」とアウシュビッツのことを示唆。それに対する彼女の答えは「私が何を感じようとも死んだ人は生き返らない」でした。

一般的な、もしくは自分と同じ気持ちを相手に期待しても、価値観が違う人には通用しません。逆に相手からすると、こちらの価値観がおかしいと思っているわけですから、当然共感はできないのです。

期待して裏切られるとこちらもダメージを受けますし、それが相手に伝わると相手もダメージを受けます。いくら一般論であっても、感情の共有を期待することはやめたほうがよさそうです。

③価値観が違うことを受け入れる

映画では、マイケルはハンナが罪をかぶってまで文盲を隠すことを尊重しました。私がマイケルならすぐさま裁判長に伝えますが、マイケルは命をかけて弱点を隠す彼女を受け入れたのです。価値観が違うことを認めるのは、その人を受け入れること。

正直一緒にいてものすごく苦痛・ストレスになるほど価値観が違う人とは、離れてしまうか、あきらめて表面的につき合うのが一番楽です。しかし中には、夫や親など、離れられない人が実はまったく違う価値観だったと途中で気づくパターンもありますよね。こうなったときがちょっと大変。

相手が頑固でなく理解ある人ならば、話し合いをして、自分がつらく思っていることを打ち明け、一緒に解決策や妥協点を探すのがいいでしょう(相手にだけ変わってもらうのはおすすめしない)。

しかし中には話し合いに応じない人もいます。このケースが本当に苦労する!もはや自分との戦いです。この場合はもう受け入れるしか方法がないと私は思っています。相手を無視する”あきらめ”とは違い、”受け入れ”には愛情があるので、ちょっとした悟りのような状態でしょうか。

ただ、話し合いに応じないタイプの人はモラハラとかDVとかにつながっている可能性もあるので、その場合自分と戦わず、弁護士を召喚して相手としっかり戦ってください。それができないなら逃げてください。

価値観の違いでめちゃくちゃ苦しんでいる人はけっこう多い

愛を読むひと』は”価値観が違う人とのつきあい方”を描いた映画ではまっっったくないので、多少無理やり結びつけたところもあります。ただハンナを見ていて少し思うところがあったためブログにしてみました。

相手を理解できず、または理解されず、つらい思いをしている人が身近に何人もいますが、自分が望んだ通り相手が変わってくれたなんて話聞いたことがありません。相手がそれなりに歳を重ねているならなおさらです。

価値観が違っておもしろいと思えるならいいのですが、もしあまりにも苦痛に感じているのなら、少しがんばらなきゃいけないかもしれませんね。

 

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参考サイト
愛を読むひと - Wikipedia

画像引用サイト
http://www.amazon.com/Reader-Kate-Winslet/dp/B001PPLJIQ
http://highdefnews.blogspot.jp/2009/03/reader-blu-ray-review.html
http://www.fanpop.com/clubs/kate-winslet/images/4097290/title/kate-reader-screencap
https://lifevsfilm.com/2013/06/20/the-reader/
http://www.telegraph.co.uk/journalists/sukhdev-sandhu/4014816/The-Reader-review.html
http://derekwinnert.com/the-reader-classic-film-review-536/
http://instandmindshots.blogspot.jp/2014_07_01_archive.html